Concert コンサート情報>エリーナ・ガランチャ リサイタル
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♪演奏予定曲目♪
◆ビゼー《カルメン》から
『ハバネラ』 他
※予定曲は変更になる場合があります。

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ggs   【エリーナ・ガランチャ】
 なめらかで光沢がある上等な絹のような声を、繊細かつ大胆に織り上げる。エリーナ・ガランチャは現代最高のメゾ・ソプラノの一人で、いまレパートリーにしている曲において、彼女の右に出る歌手は想像がつかない。  
 技巧的な役もドラマティックな役も、極上の響きとやわらかさを失わずに軽々と歌いこなす。その上、舞台姿はこのうえなくエレガント。メトロポリタン歌劇場やウィーン国立歌劇場で、観る人の心を確実に奪い続けている。  
 ラトヴィアの音楽一家に生まれたガランチャは、ソ連から独立する前の苦難のなかでハングリー精神を培い、生地の音楽院のほかウィーンやアメリカでも学んだ。1999年にキャリアを開始すると短期間で評価を確立し、2003年にウィーン国立歌劇場やザルツブルク音楽祭に抜擢されて以来、オペラ界の頂点を走り続けている。  
 その歌はキャリア初期から本物だった。深くやわらかいモーツァルトも、軽やかで技巧的なロッシーニも、表現に隙も緩みもなかった。
 声に深みを増し、十八番は《カルメン》のタイトルロール、《サムソンとデリラ》のデリラ、《ドン・カルロ》のエボリ公女、《カヴァッレリア・ルスティカーナ》のサントゥッツァなど、ドラマティックな役に移ったが、激しい感情や複雑な心理も、まろやかな深い響きで掘り下げる。完璧なテクニックに支えられた声が、理想的に成熟しているのだ。
 キャリアの頂点に登りつめたいま実現する、久しぶりの来日。絶頂期のディーヴァを味わい尽くす、またとない機会である。  
執筆:香原斗志(オペラ評論家) 写真:©Paul Schirnhofer&Gregor Hohenberg/DG